「です、ます」調と「た、だ」調である。
「です、ます」調は、話し言葉の丁寧語から来ている。文章でいうときは「丁寧体」「敬体」という。
「です」は、江戸の遊郭で発達した言葉。「ます」は上方で生まれたと言われている。それが明治維新とともに教科書に採用されて標準語となり、口語体の文章の基本となった。
現代人が普通に会話するときは「です、ます」で話す。これをほぼそのまま文章にしたのが、「です、ます」調だ。
「です、ます」調の文章は、あたりが柔らかなので、読みやすいという特徴がある。日常の話し言葉に近い文章なので、入り込みやすく、抵抗感がない。親切な文章だと言えるだろう。
しかし、「です、ます」調の文章は、感情に引っ張られやすいところがある。論理的なこと、複雑なことを説明するときに、どうしても文章が長くなるうえに、わかりにくくなりがちだ。
これにたいし、「た、だ」調は、「である」調から発展したと言われている。「た、だ」「である」ともに、「です、ます」の「敬体」に対し、「常体」と言う。
「である」調は、武士階級の「であろう」から派生した。明治に入って政治家が演説などでよく用い、これを新聞記者が記録したことで、文体として普及した。
「た、だ」は、この簡略体だ。新聞記者が多く用いたことから、これが日本語文章の一般的なスタイルとなった。
「た、だ」調は、敬語の要素が一切入っていないので、上から目線でものを言われているような感じがする。冷たい印象もあるともいわれる。手紙などにはふつうは使わない。
しかしながら、「た、だ」調は、新聞記者が長年磨きこんだ文体だけに、無駄がなく洗練されている。
論理的なこと、難解なことを明快に説明するためには、「た、だ」調の方が向いている。
例文1)
少子化に加え、所得の目減りが社会保障に影を落とす。00年に平均616万9000円だった年間の世帯所得は09年、549万6000円へと70万円近く減った。09年の相対的貧困率は16.0%と過去最悪を更新した。 このため一体改革では3.8兆円を投じ、低所得者の年金加算や国民健康保険料の軽減などに取り組む。ただし、同時に「1.2兆円の効率化」にも着手するのが基本の枠組みだ。なのに負担増案を軒並み先送りした民主党の抵抗は激しく、5%の税率アップでも社会保障制度を賄えなくなる可能性が高い。
例文1)の「た、だ」調で書かれた毎日新聞の記事を「です、ます」調に置き換えてみる。
例文2)
少子化に加え、所得の目減りが社会保障に影を落とします。00年に平均616万9000円だった年間の世帯所得は09年、549万6000円へと70万円近く減りました。09年の相対的貧困率は16.0%と過去最悪を更新しました。 このため一体改革では3.8兆円を投じ、低所得者の年金加算や国民健康保険料の軽減などに取り組みます。ただし、同時に「1.2兆円の効率化」にも着手するのが基本の枠組みです。なのに負担増案を軒並み先送りした民主党の抵抗は激しく、5%の税率アップでも社会保障制度を賄えなくなる可能性が高いのです。
241文字だった文字数が252文字に増える上に、間延びがして真剣味がなくなる。
最近はブログなどで「です、ます」調の文章を多く書く人が増えている。近況や日常雑記などは、「です、ます」調でのんびりと書くのが向いているが、こういう文章を書きなれてしまうと、引き締まった文章を書くのが難しくなってくる。
文章の練習をするためにブログを書くのであれば、「た、だ」調で書くのをおすすめしたい。頭の中に「た、だ」調の文体がしっかり入れば、文章は引き締まってくる。
また「た、だ」調で書いた文章は簡単に「です、ます」調に置き換えることが出来る。
「た、だ」調の文章は、新聞の文章です。新聞社では基準となる表記、言葉遣いなどをまとめたルールを作っている。各社から発行されていますが、最も有名で、信頼性が高いのが、『朝日新聞の用語の手引』だ。
コピーライターは、ボディコピー(本文)を書くときには、この本を良く勉強したものだ。
これを基準に文章を書けば、少なくとも新聞のレベルの明快な文章を書くことが出来る。
公的な文書でなければ、業務上のeメールやプレゼンテーション資料にまで使われています。私はそのことに違和感を感じないのですが、40代以上の方は違和感や拒絶感があるものなのでしょうか?