kayobi-honnohi



古代エジプトというと、たとえば近代アメリカとか、中世ヨーロッパとかと同じようなスケールの歴史区分だと思ってしまう。しかし、実際の古代エジプトは、紀元前3150年から紀元前30年までの実に3120年の長さを持ち、血族は愚か、人種さえ違う31もの王朝が権力を握った、壮大な歴史を有しているのだ。

いってみれば、古代エジプト史は、紀元後の世界史に匹敵するくらいのスケールを持っている。

さらに驚くべきは、この長い長い歴史を持つエジプトの各王朝が、ほぼ同じ言語と宗教を持ち、文字もほとんど共通だったということだ。
 

王朝、政権の評価、良しあしの基準はいろいろあるだろうが、「永く続いた」というのも一つの評価基準ではあろう。そういう意味では、古代エジプトという「国家モデル」は、世界で一番成功した例だとも言えるだろう。


この本は、上エジプトと下エジプトを始めて統一したと言われるナルメル王、その息子と言われる初代のファラオ、ホル・アハから始まり、最後のファラオである例の女王クレオパトラ(7世)までの記録を延々と綴った本である。300ページ足らずの本だから各王朝は、ほんのハイライトしか紹介されていないのだろうが、それでも読みごたえはある。


私は、この手の歴史を淡々と綴った起伏に乏しい本が大好きなので、折に触れて読んでいる。


31
の王朝の中には、変わり種もたくさんある。エジプト人ではなく、黒人(ヌビア人)のファラオをいただいた王朝もあった。この王朝は、歴代王朝の中でも際立って善政を敷いたようだ。


ピラミッドを作ったのは、古い時代の王朝だけ。後の王朝はピラミッドの石を切りだして、自分たちの宮殿を作ったりしている。エジプトの町の写真を見ていると、古代の王の名前を刻印したもの=カルトゥーシュが、柱や壁に散見されるが、これらも、昔のピラミッドや宮殿を再利用したものだろう。


有名なツタンカーメン王は、エジプトのファラオの中でもとびきりの変わり物として知られるアクエンアテンの子だとされている。アクエンアテンは、ファラオが信仰してきたアメン神の神官の力が強くなるのを嫌って、一神教のアテン神を信仰し、名前もアメンホテプ(「アメン神は歓びたまう」という意味)4世から、アクエンアテン(「アテン神の僕」)に変えたのだ。顔が長く下腹が出た特有の風貌の像も数多く残っている。その子と言われるツタンカーメン(「アメン神の似姿」)も、当初はツタンカーテン(「アテン神の似姿」)だった。しかし父王の死後、神官が勢力を取り戻し、改名させられたとされる。ここらの話も面白い。


ユダヤ教徒はエジプトのファラオの弾圧を受けた。そのためにモーセはユダヤ人を率いてエジプトを出たのだ。ユダヤ人を迫害したエジプトの王朝は、第19王朝のラムセス2世だと言われている。エジプト全盛期のファラオだ。


最後のファラオは有名なクレオパトラだ。彼女はローマ人であるシーザーと恋仲になる。これは、エジプト人とローマ人の人種を超えた愛だと思いがちだが、実はクレオパトラが属しているプトレマイオス朝は、ギリシア人の一流であるマケドニア人が立てた王朝だ。元をたどればマケドニアから出たアレクサンドロス王の大遠征の際に、エジプトの統治をまかされた将軍プトレマイオスの子孫なのだ。つまり、クレオパトラとシーザーの恋はギリシャ人とローマ人の恋だったのだ。

 



こういう感じで、いろいろ薀蓄が積みあがっていく。歴史好きにはたまらない一冊なのだ。

日本のエジプト研究の第一人者、吉村作治氏が監修。丁寧に作られている。

歴史をたどることが、純粋に好きな人には格好の一冊ではないかと思う。

 



私のサイトにお越しいただき、ありがとうございます。ぜひ、コメントもお寄せください! ↓