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高坂正尭『世界史の中から考える』


あのやわらかな京都弁を聞かなくなって久しい。阪神ファンで、辛口の評論をし、庶民的でもあった。同時に左翼からは保守反動の学者とも言われた。

高坂正尭(1934-96)が生きていたら、今の韓国、中国との“喧嘩”をどのように評しただろうか?

高坂正尭は京都学派の哲学者高坂正顕(1901-69)の二男として京都に生まれている。早くから秀才の評判が高く、30歳で元首相吉田茂にインタビューし、『宰相吉田茂』を書いている。
 

60年安保後の日本では、吉田茂はアメリカにすり寄る反動政治家と言われていたが、高坂は国益を第一に考えた吉田茂の現実主義、リアリズムを高く評価した。吉田茂はイギリス流の外交術を駆使し、アメリカをうまく利用して、高度経済成長の流れを作ったのだった。この本は、ベストセラーになった。これによって、最晩年の吉田茂の評価は大きく変わったのだ。
 

なにより、高坂正尭は、その語り口と同様、文章にもユーモアがある。また、たとえ話が非常にうまい。
 

例えば、日米の自動車摩擦が問題化した時に、高坂はこれを囲碁の指南にたとえた。囲碁を習いに来た弟子に師は惜しみなくその技を教える。弟子がまだへぼで、師に遠く及ばないときは師は寛大で鷹揚だが、対等に戦うようになると、にわかに作法がなっていないの、筋が悪いのと文句を言いだす。日米の関係もそのようなものであると。日本の国力が米国に追いつきつつあったために、米は態度を豹変させたのだと。

人間関係の眼目は、小難しいイデオロギーではなく、こうした自然の心の動きだということを高坂はごく平たい表現でさらっと言ってのけるのだ。

その背景には、歴史=教養の深さがある。政治はイデオロギーではなく、リアルな歴史から学ぶべきだと高坂は言っていたのだ。
 

今の中国、韓国との関係も、高坂ならば、絶妙のたとえで説明したのではないだろうか。

 



『世界史の中から考える』は、老成した筆致で国際政治の諸問題を丁寧に解説している。その文体は軽妙だが非常に知的で、心が洗われるような気がする。
 

民主党の前原誠司氏は、浪人時代に高坂の『国際政治』を読んで政治家を志向し、京都大学で高坂ゼミに入ったという。
 

前原氏は国家や国民を声高に語らないし、愛国心やイデオロギーも口にしないため、一部の勢力からは目の敵にされているが、政治をリアリズムで語るという点で、高坂の学徒なのだろう。

変な言い方だが、一般に出版されている高坂の著書は、政治の本だと思わなくても良いと思う。司馬遼太郎のエッセイ、紀行を読むような気持で楽しんで読めばよいと思う。
 

没後16年がたつが、全く色あせない。

 

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