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間もなく総選挙の投票箱が閉じられようとしている。今回の選挙は難しかった。「政権交代」のような易しいテーマが無くて、「いい者、悪者」がはっきりわからなかったためだ。

経済環境が厳しくなる中、企業は金回りが悪くなった。また、ビジネスのボーダレス化によって企業は従業員ではなく株主の方を向くようになった。

企業は毎年利益を出して株主に配当をしなければならない。だから、業績が悪くなったらすぐに人を切るようになった。長年会社のために働いてきた社員であっても「希望退職」という名で退職を募る。

企業はどんどんスリムになっていく。足りなくなった人員は、正社員ではなく臨時雇いで補おうとする。新卒採用は必要最低限になっていく。

こういう状況が企業や官庁で20年近く続いてきた。

私は大企業や官庁などに出入りをさせていただいて仕事をしているが、どこへ行っても中高年の社員、職員しかいない。若い人がいるなと思ったら、取引先からの出向だったり、契約社員だったりする。この人たちは正規の社員、職員とは給与的にも待遇的にも大きな差がある。

大きな会社や官庁では、そろそろこの時期から組合が勇ましいポスターを貼って、従業員の所得や待遇の改善を求めようとするが、組合は正規雇用者のことしか考えていない。

連合などは「非正規雇用者も団結を」などというが、本気でやるきはない。組織を防衛するためにも、既成の組合員の利益、正社員、職員の利益だけを守ろうとする。

 

昔に比べれば、大企業の正社員の口は少なくなった。企業はほんの一握りの優秀な人を獲得しようとする。大学全入社会が到来したと言っても、受験戦争が無くならないのは、一流大学に進まなければ大企業の就職は厳しいからだ。

 

こういう形で、日本のエンジン部分を形成する企業や官庁などは、若者が入ってくるのを締め出そうとしている。そして利益を株主と、残った中高年の社員で分配しようとしている。

 

深刻なのは、こういう形で締め出された若者の多くが『経験値』を積むことができないことだ。

私はバブル期の前に社会人になり、小さな企業ではあったが社員として経験を積ませてもらった。広告の仕組みを学んだり、文章の書き方を学んだのも、みんな会社員時代だ。以後、いろいろな境遇で仕事をしてきたが、キャリアの最初に「未経験者」である私を雇用してくれなければ、おまんまを食べる道は閉ざされていたはずだ。

 



今、多くの若者が、何も学ばないままに社会に出て、単純作業などで生計を立てている。少し時間が経つと世の中のことが見えてきて、「自分はこのままでは一生うだつが上がらない」ことに気が付いて、何とかしなければと思うのだが、ほとんどの場合、何ともならない。

世の中は、「いい会社、組織に入った人」と「一部の選り抜かれた若者」にとって都合の良い社会になろうとしている。そこに入れなかった若者は「入れてやらない」と言われている。

 

老人たちは年金を受け取って長生きし、医療費もたっぷりと使っている。若者が老人になるときには考えられないような、ゆとりのある生活をしている。

 

しかし、今の多くの若者は怒らない。世の中を変えるべきだとは思わない。社会のことや政治のことに関心がない。

 

今回の選挙は、投票率が前回よりも7ポイントほど下がりそうだ。

とりわけ20代、30代の若者の投票率は、50%を割り込みそうだ。

政治もいわばマーケティングだから、政治家は票をたくさんくれる層に向けて、サービスをしようとする。

若者は置き去りになっていく。利いた風なことを言う間に投票所に行かないと、貧しいままで、バカのままで一生を終えることになる。今回の投票率はどうだろう。

 



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