アメリカ、コネチカット州の小学校で起こった若者による銃乱射、26人殺害事件は、世界中に「またか」というため息をつかせたことだろう。

非常に単純な事件である。何らかのことで個人的に絶望し、逆上した人間が他の人間を殺害して自分も死のうと思った。そして目の前に銃があったということだ。

 

今回の犯人は、母親に引きこもりについて注意されて逆上し、銃マニアだった母親の愛用の銃で母を射殺し、マシンガンを携えて近所の小学校に行き、小学1年生の子供と教師らを殺害したのだ。殺害の意思は非常に強固で、犠牲者たちの体には何発もの銃弾が撃ち込まれていた。そして、パトカーのサイレンの音が近づくと、自らも頭を撃って惨事を終わらせたのだ。

 

オバマ大統領は、涙を見せながら犠牲者を悼み、事態の改善に言及した。そしてバイデン副大統領をリーダーとする特別チームを立ち上げた。

 

全米ライフル協会=NRA本部の周りでは「恥を知れ」と言うプラカードを掲げた市民たちがデモを行った。NRA=は、「学校の教師が銃を持っていれば惨事は防ぐことができた」と反論。ひとしきり銃規制の機運が高まっているが、同時に、全米で銃を購入する人々が急増した。規制される前に、自分たちだけは銃を手にしようと思う人々である。

 

ずっとワンパターンである。



マイケル・ムーア監督の「ボーリングフォーコロンバイン」という映画でも紹介されたようなことが、繰り返されているのだ。

 

NRAは、全米で最も強固な圧力団体であり、支援した連邦議員の80%を当選させるという強固な支持基盤を持っている。主に共和党の議員を支援しているが、民主党議員や大統領にも大きな影響力を持っている。

 

NRAは、銃火器の保有は、自分たちの力で独立を勝ち取ってきたアメリカ市民の当然の権利である、という考えを前面に立て、銃の保有はアメリカ人のもっとも重要な権利であると主張している。そして銃による深刻な犯罪が起こるたびに、「犠牲者たちが銃を持っていれば惨事は起こらなかった」と主張している。

 

これがどれほどおかしな理屈であるかは、誰しもがわかることだ。どんな人間でも、人に殺意を抱く瞬間がある。多くの人は良識、理性でそれを打ち消すが、中にはその思いにとらわれる人もいる。

その時に、決定的な殺傷手段=銃を所有していれば、それを実行する可能性は格段に高まる。単なる妄想に過ぎないはずの殺人衝動が、「銃」という具体的な手段を目の前にして、にわかに現実のものになるのだ。

法治国家にあって、人を殺害することは、自らの破滅を意味する。殺人者たちの大部分は、大量殺人を決意すると同時に、そのエンディングを自らの自殺で締めくくることも決意するのだ。

 

死を決意している人に対して銃で威嚇しても、抑止力にはならない。仮に犯罪者と被害者が銃を持って対決したとしても、死を決意している人の方がはるかに有利になることは間違いがない。

確かに、被害者側が銃を持っていることで、殺される人の数が減る可能性はあるだろうが、殺人衝動を抑え込むことはできない。

 

むしろ、そういう形で多くの人が銃を常時所有することで、殺人衝動に駆られる人が生まれる危険性は高まると考えられる。

 

こうした事件が起こると、世界中が「アメリカでしか起こらない事件だ」と報じる。確かに他の国でも銃による大量殺人事件は起こっているが、アメリカは頻度においても、深刻さにおいても比較にならない。超大国アメリカは、世界に対して大きな影響力を持っているだけに、こうした犯罪が国境を越えて押し寄せてくることに、世界は警戒を深めているのだ。

 

先進国では新自由主義が力を得つつある。規制を外し、自由競争を激化させることで経済を活性化させようとするものだ。しかし新自由主義は勝者と敗者を生む。経済格差を大きくする。このために将来に絶望する人々は増加する。銃規制をしない(できない)アメリカでは、おそらく今後もこうした犯罪は起こり続ける。

 

アメリカは、世界で最も富んだ国である。また最も自由な国であり、最も正義が行われている国だと自他ともに認めている。しかし、そんな国でも深刻な病理は存在しているのである。

 

アメリカは自国の文化や考え方をどしどし世界に輸出し、世界中を「アメリカのように」しようとしている。また「世界の警察官」を標榜し、世界平和にも貢献しようとしている。

「パックス・アメリカーナ(アメリカによる平和)」と呼ばれる体制は揺らぎつつあるとはいえ健在だ。

しかしそのアメリカのもっとも重要な原理の一つである「武器保有、使用の自由」だけは、世界のどの国も真似しようとは思わない。NRAの主張がおかしいことは、この事実を見てもわかる。世界の国々はアメリカのようにはなるまいと考えているのだ。

 

こと「銃」に関することだけは、アメリカは世界中で最も遅れた、ある意味で北朝鮮よりも非常識で野蛮な国だといっても良いのではないか。

 
 

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