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6月頃の日経新聞で、大投資家として知られるジム・ロジャース氏が、「日本は少子化問題を解決しなければ、将来はない。私は投資に消極的になる」と言っていた。

昨日のNHKスペシャルでもこの人は「少子化問題が解決しなければ、日本の国債は破たんする」とも言っていた。

 

長いスパンでの重要な指摘だと思う。我々は不景気になるとありとあらゆるものを切り詰めようとする。家計を切り詰め、経費を切り詰め、人件費を切り詰める。この冷え切った気持ちの延長線上で、出産や子育てまで切り詰めようとしている。

 

パイが小さくなるというのは、ありていに言えば、「もうこれ以上分けてやらない」と思う人が増えるということだ。

企業が今いる正社員のために雇用を抑制し、いつでも首を切れる非正規社員を雇いたがるのもその意識からだ。さらに正社員でも「見込みのある人間」だけを残し、他をリストラする意識もそこから出てくる。

 

「自分たちだけは助かりたい、生活レベルを落としたくない」という意識が、そのようにさせるのだ。

 

これから社会に出ようという若者に対して、大人たちがきわめて冷淡になったのも「この社会はもう定員いっぱいだ」との意識が強くなったからだろう。

 

10年あるいは20年と言われる景気低迷の中で、日本人はすっかり後ろ向きになった。そして貧困を恐れるようになった。また、他人に対して冷たくなった。

 

少子化もそうした「冷え込んだ心」によって深まっているのだろう。若い夫婦は、自分たちの生活のクオリティを落としたくないから子供を作らない。

社会も金がかかり、手がかかる子どもに対して、無意識のうちに非寛容になっている。

 

もう一つ、私たちは「明日食べていくのが精いっぱい」という意識に凝り固まっている。将来的な明るい希望は「非現実的」だと思っている。

そのために、次世代はおろか、5年先、10年先を見越すこともしなくなっている。ましてや自分たちが死んでから後のことなど「知ったことではない」と思っている。

 

少子化は、高齢化社会にとって、危機的な状況だ。働き続けてきた人々が余生を安穏に送ろうとしても、養ってくれる人がいない。若い世代の数が少なくて、経済が落ち込んでしまい、高齢者にまわすお金が無くなってしまうからだ。

今、働いている世代は、自分たちの下に若い働き手を入れて仕事を仕込み、一人前にしなければ、自分たちの老後が危ういのだ。にもかかわらず、今の自分たちの生活水準を守るために、若者を締め出そうとしている。

 

日本社会が狭量で、不機嫌で、消極的になることは、結局、未来を閉ざすことになり、日本の国を衰亡させることになるのだ。



日本政府に内閣府特命担当大臣(少子化対策担当)が設けられたのは、2007年のことだ。当時の安部内閣が、衆議院議員の上川陽子氏を任命したのが始まりだ。

以後、拉致事件で名を挙げた中山恭子氏、総理の地盤を継いだ小渕優子氏、社民党党首の福島瑞穂氏(民主党が民社党との連立を離脱してからは平野博文文部科学大臣が事務を代理)、玄葉光一郎氏、社会党系の岡崎トミ子氏、与謝野馨氏、蓮舫氏、岡田克也氏、中川正春氏、小宮山洋子氏、中塚一宏氏と5年間で13人もの人が歴任してきた。

基本的には女性のポストで、男性が任じられるときも重たい役職ではない。

 

しかし、少子化大臣は、世間のご機嫌取りで人を配するべきポストではない。また、女性に割り振って事足れりというポストでもない。

 

少子化問題は、男女問わず、重量級の実力派の政治家を大臣に据えて、長期的に取り組むべき課題だ。

明後日発足する第三次安倍晋三内閣では、また小渕優子氏を起用する話が出ているようだが、ただのお飾りならばやめてほしい。副総理格の、本気で取り組んでいける人を充ててほしい。

今、まじめに少子化問題に取り組まないと、我々は国ごと緩慢な自殺をすることになるだろう。

 

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