最後に丹波篠山の「食」について触れておこう。

私の印象では、丹波地方の食は「土の味」である。

黒豆にしても自然薯にしても、丹波の土を抜きにしては考えられない。有機質の養分をたっぷり含んだ粘り気のある土が、丹波の農作物を育てているという印象だ。

 

少し前まで私は旅行のPR雑誌の編集をしていた。関西地方は11月になると、北陸地方への「カニツアー」が大人気になる。それこそ民族大移動という感じだが、カニをたらふく食べた帰途、車内販売で「丹波黒豆大福」や「黒豆せんべい」さらには黒豆そのものなどを販売すると、あっという間に売り切れた。

なぜか、御馳走を食べた後も丹波の黒豆ならお腹に入るようなのだ。

kuromame
 

 

京丹波や丹波篠山などで何度か取材をしたこともあるが、丹波の黒豆がおいしいのは、寒暖の差が激しい気候にもよるようだ。

丹波の黒豆は、普通の大豆よりも早く葉っぱや茎の色が変わる。見てくれは良くないから昔は売れなかったそうだが、今は関西地方の人は待ちわびている。グルメ商品になった。

 

味が濃厚で、豆の香りがはっきりわかる。豆なんて大した食材じゃないと思っていた人の認識がここ十数年で変化したように思う。私が訪れたときは、旬の終わりだった。畠には少し植わっていた。

kuromamehatake
 

 

自然薯は粘土質の土地で育つ。ねっとりした食感がたまらない。これをすりおろしてみそ汁に入れたものを売っていたので食した。予想通りの味。

 

とろろは、腹持ちがいい上にカロリーが低い。これ、普通の土質で育てるとここまでの粘り気はなくなるという。

 tororojiru

 

そして栗。今は「天津甘栗」が有名だが、私は子どもの頃は栗と言えば丹波栗だった。関西地方では、お正月に栗の甘露煮を押しつぶした「栗きんとん」をおせちに入れるが、これは甘すぎて、栗本来の味がしなかった。

岐阜県では、栗を炊いて砂糖を加えて茶巾絞りにしたのを「栗きんとん」という。これは上品な甘さの和菓子で、抹茶にも供される。この地方の取材も何度かしたが、岐阜の栗きんとんは大事なお客様に持っていく主菓子だった。

この岐阜県のスタイルの栗きんとんを丹波地方でも見かけた。早速購入した。やはり香りが素晴らしい。こういうことはどんどん真似をしてもらいたい。

 

そして丹波と言えば、イノシシ。「ぼたん鍋」は外せない。猪は豚の先祖であり、DNA的にはほとんど変わらないが、味はえらい違う。

豚肉は、淡泊で香りも少ないが、猪肉は野生動物の味がする。肉質も猪の方が固い。これは生活環境と食材によるところが大きいのだろうが、まるで別の食べ物だ。

inoshihsi
 

 

猪肉は鮮度が命とされる。とれたての肉は臭みが少ない。それでも匂い消しに味噌を入れて濃い味で煮立てる。これがぼたん鍋だ。少し厚めに切った肉を入れるが、良い猪肉は煮込んでも固くならない。味がじっくりと沁みて美味しくなるのだ。

残念ながら、今回、丹波で食べた猪鍋は、肉が薄すぎて味噌の味に負けてしまい、いまいちではあった。次回はぜひ、よいぼたん鍋にトライしたい。

 

丹波篠山の魅力は、土地の人が郷里を深く愛していることだと思う。昔の街並みが残っていた。よくある芝居の書き割りのような「作った昔の風景」ではなく、そこに人々が普通に生活しているのが尊いと思った。

 


 

 

私のサイトにお越しいただき、ありがとうございます。ぜひ、コメントもお寄せください! ↓