大阪、御堂筋や心斎橋を歩きはじめて
40年近くになるが、最近は雰囲気がずいぶん変わった。

本町辺りで仕事をして、難波まで心斎橋筋を歩くのは楽しいものだ。店もいろいろ変化するし、ディスプレーも変わる。昔は大丸、そごうがこの筋の「顔」だったが、そごうがなくなって、大丸だけになった。大丸は心斎橋筋のいろんな店舗も買収していて、個別の店だと思って入ると、大丸の制服をした人が出てきたりする。


外見はあまり変わっていないように思えても、この通りも確実に変わっているのだろう。

道行く人も変わった。

夕方にこの筋を歩くと、日本人よりも外国人の方が多い。中国人、韓国人、台湾人。頬を上気させて楽しそうに歩いている。

内田百閒は繁華街を人の流れに逆らって歩いていると、「逆さまに扱かれている気分がする」といったが、北から南に歩いていると確かに髪の毛が逆立つような心地がする。

中国人はいい服を着て、男性が女性をエスコートしている。色の使い方が日本人とは違う。韓国人も似ているが、日本人に少し近い。カメラを持っていることが多い。台湾人はラフな服装で家族連れなど団体が多い。

こんなにたくさん歩いていても、日本人は一発でわかる。なぜなのかはわからない。


 

南へ南へ歩いて、道頓堀に差し掛かり、ひっかけ橋を渡って右に回り、松竹芸能の事務所のある松竹座の角を曲がると「はり重」という古い造りの肉屋がある。

「ここは昔、義太夫の席やったんやで」

と先代の桂文枝に聞いた覚えがある。昔は繁華街の角地には寄席や芝居小屋があった。一等地には人寄せ商売があったのだ。

「今はたいがい銀行になってますな」とは桂米朝。


「はり重」は、おいしい肉料理を食べさせることでも知られている。

「肉」というのはこの場合「牛肉」のことであって、他の肉ではない。
「『テキ』を食べるならここ」という大阪人も多い。

すきやきも良い。今はなき「食いだおれ」とこの店は、一つの鍋に一人仲居さんが付いて給仕をしてくれる。これが大阪のすきやきの本寸法だ。


ステーキは昼なら5000円でおいしく食べられた(今はステーキはグリルでしか食べられない)。昔はよくはりこんで食べたものだが、ある時期、この店をよくお見合いに使ったので、今は何となく行きたくない。

 
この「はり重」から23軒先に「はり重グリル」という店がある。「はり重」の洋食部という感じだ。

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ちょっと不思議な店だ。四角い部屋にテーブルが並んでいる。厨房はほとんど見えない。BGMは一切ないので、いつ行っても「しん」としている。

ここの売りは「ビーフワン」という他人丼だ。吉野家の牛丼が出る前から人気のメニューだった。

実は私は食べたことがない。この店へ行き始めて30年になるが、私はミックスグリル(と言うネーミングだったと思うが)しか食べたことがない。

普通の洋食をごく当たり前に作っているのだが、安心できる味だ。

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昔ながらの洋食には、スパゲティのケチャップ炒めが必ず入っている。うちの奥さんなどは「ご飯にスパゲッティなんてわけがわからない」というのだが、これがないと洋食を食べた気がしない。

「はり重」は、この赤いスパゲティが非常によろしい。もちもちして、ご飯に実によくからむ。


この店は最近、行列ができていて時分どきにはなかなか食べることができない。先日、11時過ぎに通りかかって、10年ぶりくらいに食べたのだが昔と同じ味だった。


店の端っこで、昼間からミックスグリルを肴に瓶ビールを飲んでいる男性がいた。こういうの、あこがれる。


この店も中国語や韓国語のガイドに載っているようで、あちらの人々も来るようだが、静まり返った店内では、静かに食べているようだ。


心斎橋はずいぶん変わったが、こういう店がひそかに息づいていると思うと、少しうれしい。また散歩のついでに寄ってみよう。


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