前にも書いたと思うが、私はどんな町へ行ってもお寺を見て回る。ここ15年くらいの習慣だ。
先月、台湾の台中市に行ったときも町のお寺を見て回った。日本と違って、寺院と神社に明確な区分はない。
仏教寺院、道教の祠、関帝廟のようなものも含め、いろいろ見た。それぞれに一定の様式がある。しかし、祭壇のレイアウトや、建物の配置、共通点も多い。
これは礼拝する対象こそ違え、台湾の人々が神様、仏様にお祈りをするスタイルがだいたい同じだと言うことだ。そして、日本の寺院との共通点も多い。

ただ、多くの寺院には立派な「焼却炉」がある。装飾を施して仏塔のようになっている。これは、日本にはない。この焼却炉は歴とした宗教設備である。

kosi-00


台湾では先祖をまつるときに紙銭という模造のお金を使う。先祖があの世で使うためには、この紙銭を燃やす必要があるのだ。昔はこれを境内で焼いていたが、灰が飛び散るし、火の始末も悪いので、焼却炉で燃すようになったのだ。

寺院や廟の中には立派なものもあったが、そうした一般の寺院とは全く違う巨大な宗教施設が台中市の真ん中にあった。
「孔子廟」だ。
文字通り儒教の祖、孔子をまつった廟だが、門から一歩はいると「これは日本のお寺だ!」と小さく叫ばずにはいられなかった。

台中市、孔子廟の平面図。

kosi-01


日本のお寺をご存じの方ならわかると思うが、門を入ると目の前に池があり、正面に回廊に囲まれた巨大な山門、そしてその中に一番重要な建物があるという構造は、日本と全く同じだ。
特に禅寺の本山は、ほとんどがこのスタイルだ。

雑然とした音がひっきりなしに流れている台中の町中だが、境内に入ると別世界のような静寂が広がる。

kosi-02


回廊を入ると正面に大きく軒反りのある屋根を持つ大成殿が翼を広げるように立っている。
屋根は朱色だが、そのたたずまいは、お寺そのものだ。

kosi-03


孔子廟は台中市が管理する建物で、回廊はカルチャーセンターや展示室になっている。日本の禅刹も座禅堂や修行の場になっていることが多い。このあたりの空気も同じだ。

中に祀られているのは仏様ではなく、孔子。大きな位牌が安置されているが、周囲には鐘や太鼓も置かれている。金ぴかではあるが、色を度外視すれば日本の寺院とほとんど変わらない。

kosi-05


kosi-06

境内にはお年寄りの姿、そしてはいはいする子供の姿も。こうした平和な空気が流れるのも日本のお寺と同様だ。

kosi-07


kosi-04


緩やかにカーブした回廊の屋根が美しい。

kosi-09


さて、日本のお寺や寺院の多くは神様、仏様にお祈りをする場所は、「二重構造」になっているのをご存じだろうか。
お寺でいえば「外陣」と「内陣」。人が手を合わせるのは「外陣」。仏様は「内陣」にいる。神社でいえば「拝殿」と「本殿」。神様がいる「本殿」の前に人々が拝礼する「拝殿」がある。本当に尊いものは、人々のいるところの奥にある、という構造だ。
四国八十八か所などの巡礼でも「奥の院」と言うものがあるが、これも「二重構造」の変化形と言えるだろう。

実はこの孔子廟にも「大成殿」の奥に、崇聖祠という建物があった。何を祭っているのだろうと思ったら孔子の先祖の位牌だった。なるほど、仏教の「内陣」や神社の「本殿」の祖形はこれなのか。

kosi-08


日本の仏教は実質的に「中国仏教」を起源としているが、教えはともかくその外形は儒教から来ているのだろう。寺院建築を真似て神社建築は発展したのだから、神社もその影響を受けている。

台中市の「孔子廟」は1970年代に建てられた。日本のどの寺院よりも新しい建物だが、その様式は中国大陸の「儒教」のスタイルをそのまま持ってきたものだ。

今の台湾には土着の文化や習俗はほとんど残っていない。全土を中国文化が覆っている。

台湾、日本と言う、中国の辺縁にある2つの国が、全く違う宗教世界でありながら、同じスタイルを有し、同じような空気を醸しているのは実に興味深かった。



 
私のサイトにお越しいただき、ありがとうございます。ぜひ、コメントもお寄せください!