日本にもこういう問題が起こるようになったか、と思う。
3月8日、浦和レッズのサポーターがサポーター席に入るゲート前に「JAPANESE ONLY」という横断幕を掲げた。その隣には日本国旗が掲示されていた。
球団側は試合開始から1時間後に報告を受け、スタッフに撤去を指示したが掲示者に接触できなかったため、撤去はさらに1時間後になった。
報道されている事実関係は以上の様だ。

この試合について浦和の槙野智章は、

今日の試合負けた以上にもっと残念な事があった…。浦和という看板を背負い、袖を通して一生懸命闘い、誇りをもってこのチームで闘う選手に対してこれはない。こういう事をしているようでは、選手とサポーターが一つになれないし、結果も出ない

とツイートした。

この問題のポイントは、2点。

まず、浦和レッズのサポーターの中に、外国人、とりわけ韓国人に対して敵意を抱く人間がいた事。
一部のサポーターによれば、前週のガンバ大阪戦で、浦和サポーター側から、今季自チームに加入した李忠成へのブーイングがあったと言う。
横断幕が掲げられた試合でも、浦和側から李へのブーイングがあったとも言われている。

李忠成は東京出身の在日韓国人だったが2007年に帰化した。日本人であり、代表のキャップも11ある。
しかし彼に対し、差別感情を抱くレッズサポーターが少なからずいたようなのだ。

レッズのサポーターは日ごろから過激な行動で顰蹙を買っていたが、一部のファンはそのレベルを超えて腐っていたのだろう。

もう一点は、浦和レッズ側の対応。
球団は当事者に接触できないことを理由に横断幕を直ちに撤去しなかった。あるサポーターによれば、
「まだ撤去しないのか?」という問いに対して、球団側は
「この件についてはクラブとサポの代表で話し合い"今後改善に向けて努力する"ということになった」と説明したと言う。
つまり試合中は横断幕をそのままにしておく判断をしたのだ。
球団側はなおも
「ここにいる人たちは"純粋にクラブを応援している人たち"だ。ただその熱意が時々間違った方向に向かってしまうだけ」
と言ったと言う。

サッカーのみならず、現代のスポーツの世界は国境を超えて地続きになっている。
ドメスティックな試合であっても、世界にオンタイムで出来事は伝わっている。

どのような事情があるにせよ「JAPANESE ONLY」という言葉と映像は世界に発信された。
そして、サポーターや球団の対応も世界中に報道された。
日本人が人種差別的な行動をし、それに対して球団がおかしな対応をしたことは、一瞬で世界に伝わったのだ。

とりわけ浦和レッズの対応は最低だった。
どこの国にもレベルの低い、おかしなファンはいる。しかし多くの国では球団側がこれに対して直ちに処断している。
ファンの言動を封じ込むことができず、及び腰の対応をしたことは、深刻な問題だ。

この事件は、日本全体が人種差別に対する認識が低い国だと受け取られかねない。
最近多発している「ヘイトスピーチ」の問題ともリンクして、日本が劣化している象徴とも受け取られかねない。

ここまでサポーターの跳梁を許した浦和レッズは、厳しく指弾されてしかるべきである。



Jリーグの村井チェアマンは
「差別的表現と認識している。発信者がどういう意図だったかより、受け手が差別されたという認識を持ちうる表現で、外国人が見たときは不快な思いをする」
として
「もしも(差別的)体質、温床があるなら考慮しないといけない」と勝ち点剥奪や無観客試合など厳しい処分に踏み切る可能性を示唆した。

日本は深刻な人種差別問題を経験していない国である。
特に非差別的な経験をあまりしていない。朝鮮人、韓国人、中国人を差別してきた歴史はあるが、海外での人種差別は米国など僅かの経験しかない。
人種差別がどれだけ悲劇的な結末を迎えるか、そして、人を「国籍」や「人種」で見ることがどれだけ卑劣であるかを認識していない。
一見無邪気で、子供じみた「差別行為」が、どれだけの衝撃を世界に与えるかがわかっていない。

私は昭和40年代からプロ野球を観戦しているが、当時、外国人選手に対して「黒んぼ!」みたいな野次は普通に飛んでいた。
国際化していない頃の日本は、無神経に差別的な言動をしていたのだ。
その感覚が一部の人間に残っていて、こうした差別行動につながっているのだと思う。

自国民の優秀さ、素晴らしさを誇らしく思うことと、「だから他の国はダメなんだ」と思うことは峻別されなければならない。
そのような言動を生むようであれば、そんなスポーツはやめた方が良い。それだけ深刻な事態だと言うことだ。

そういうわけで、私は昨日、

差別的横断幕 "JAPANESE ONLY" を出したサポーターおよびこれを放置した浦和レッドダイヤモンズ株式会社に対する断固たる処置

を求めるキャンペーンに賛同した。これを看過するわけにはいかない。ここで何としても食い止めたいと思う。

参考までに

スポーツにおける差別と結果責任

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