望んでそうなることは滅多にないが、徹夜仕事になったり、家に帰ることができずに街中で朝を迎えることがたまにある。若いときは、そういう朝にマクドナルドに行くのが好きだった。
朝のセット、薄いハンバーグと目玉焼きをバンズで挟んだソーセージエッグマフィンと、あら刻みしたポテトを小判形に成形して揚げたハッシュドポテト、そしてドリンク。

何時間ぶりかで胃に収めるこれらの食べ物は、疲れた体にはしみじみ美味しく感じられたものだ。

子供が小さいときは「マクドぉ〜」とせがまれて、休みの日など、よく行った。
所詮は子供の食物で、うまいともまずいとも思わなかったが、何もたべるものがなければ、それでもいい、と思えたものだ。

いつだったか、新幹線にマックフライポテトを持って乗って、ワゴンサービスでビールを買って飲んだことがあったが、ビールと一緒に食べるとあのポテトはとんでもなくまずいことがわかる。
油が悪いのだ。そうか、やっぱりマクドは子供の食べ物だと思った。

しかし最近、マクドナルドに行けなくなった。移動の途中でどうしても食事をしなければならなくなっても、あのMのマークに入ろうとは思わなくなった。

賞味期限切れチキンナゲット事件など、マクドナルドでは消費者の信用を損なうような事件がおこっている。
でも、私はそれは気にしていない。関わったことがあるので、外食産業がぎりぎりのコストで競争をしていることを知っているし、その手の不正はあっても不思議ではないと思っている。実際に健康面に及ぼす影響はそれほど大きくはない。

それとは別に、幻滅することがあったのだ。

私は2年ほど前に、マクドナルドの1000円のハンバーガー「ブラックダイヤモンド」を食べた。
その感想はすでにこのブログで書いたが、フォアグラ入り。たいそうな箱に入って、特別の手提げ袋に入れてくれる。

残念なマクドのブラックダイヤモンド|日々是口実-219

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ソースはまずくはなかったが、バンズはそのまま。中の食材が豪華になった分、バンズやパティなどのせこさが引き立ったように思った。話の種にはなるが、1000円の値打ちはとてもなかった。

あれを食べてしみじみ思ったのは、マクドは厨房はあるが、食べ物屋ではないということ。食材を調理することも、美味しく味付けすることもできない。ただただマニュアルにしたがって食材を合わせるだけ。料理というより製品である。

マクドナルドを食べることができたのは、まずいバンズにまずいパティ、まずいピクルスを挟み、まずい味付けでまとめられていたからだ。全ての食材はせこいが、それなりにバランスが取れていたから食べることができた。そのバランスが崩れると食えたものではないのだ。

おまけに、最近の不振でマクドの店舗は疲弊している。これまで「マクド笑い」と揶揄されても、プライドを感じさせた接客は、めっきり元気がない。改装しないからか、店も薄汚れている。

実は先日、終電に間に合わなくて安ホテルに泊まった。
翌朝、久々にマクドのモーニングセットを頼んだ。スクランブルエッグとマフィンなどのセットだった。手渡された箱を開けてみて、スクランブルエッグが、紙のプレートになすりつけられているのを見て、こんなにひどい食い物だったっけ。と思った。味もひどいと思った。

マクドナルドは、母親目線とか、スマイル0円とか、食材やサービスの向上を宣言しているが、ちょっと難しいと思う。

恐らく「魔法が解けた」のだと思う。

マクドナルドで食事をすることは、ある時期、おしゃれなことだった。日本に定着してからも、マクドは若者を中心とした人々のライフスタイルの中にポジションを得て、成長して来た。美味い不味いではなく、ある種の生き方の象徴だったのだ。
しかしここ1,2年の間に、マクドは人々のライフスタイルから剥落した。直接的には不祥事が原因だろうが、それだけではなく、マクドは軽快な都市生活者のイメージを失い、貧困の色を身にまとうようになったのだ。
言い換えれば、都市生活者がマクドナルドを置き去りにしたとも言えるだろう。

アメリカでは野球のマイナーリーグを「ハンバーガーリーグ」と言うことからもわかるように、チープなイメージの食べ物だった。日本でもそうなりつつあるのだ。
同じハンバーガーでも、700円前後で販売するフレッシュネスバーガーやモスバーガーには貧困のイメージはない。
これまで培ってきた信頼感の拠って立つところが、マクドは「イメージ」、他のハンバーガーは「味、品質」だった。その差が出てきていると思う。

また同じジャンクフード系でも吉野家などの牛丼は、もともとそんなお洒落なイメージを身にまとっていない。生まれたときからガテン系と学生を相手にしてきたから、イメージのかい離は起こりえない。それにショープレのような安い肉の食べ方として、牛丼はベストではないかと思う。

マクドナルドの将来は厳しいだろう。あのハンバーガーがお洒落でもなければ、美味しくもないということに、多くの人が気づいたのだから。
この立て直しに再びイメージ戦略を用いるのは、もはや遅いと思う。

ある意味で、それは日本が少し変質したことを物語っていると思う。




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