高知市での藤川球児の記者会見は、午後1時からだった。1時間足らずで終わったから、日帰りしようと思えばできた。そうしなかったのは、高知に行ったら寄りたいところがあったからだ。

高知城の東側、有名な朝市や、よさこい祭りの開かれる道沿いに「ひろめ市場」という市場があるのだ。
高知の名産品をはじめ、いろいろな食べ物を売っている。

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それだけなら他の地方にもよくある観光市場だが、ここは通路に椅子とテーブルが置いてあって、目の前で買った食べ物を食べることができるのだ。

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昼どきになると、近所の官庁や会社から昼飯を食べる人がぞろぞろやってくる。もちろん観光客もくる。制服姿の女子高生もグループでやってくる。
これらの人が思い思いの食べものを広げてわいわい食べているのだ。
形式的にはフードコートということだが、雰囲気は市場そのもの。

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雑多な感じは鶴橋のガード下や、沖縄の那覇市第一牧志公設市場に似ている。これらでも買ったものをその場で食べることはできるが、食事スペースの大きさが全然違う。

ひろめ市場では、ずらっと並んでいる食べ物を選り好みして買って、自分の好きな組み合わせで食べることができるのだ。
しかも、生ビールもあちこちの店で売っている。好きな食べ物を持ち寄って、宴会をすることも可能なのだ。当然の話ながら食べ物の持ち込みは禁止だ。

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私は15年ほど前、この市場の一つの店舗の、出店や商品開発をお手伝いした。その時以来気に入って、高知に来るたびに寄っている。

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いつも買うのが牛串とゲンコツのようなコロッケ。真昼間だったが、これに冷たい中ジョッキ。まずはこの組み合わせで一杯。
昼間から中年がビールを飲んでいたら、大阪あたりでは何割かの白眼視を覚悟しなければならないが、ここでは平気だ。
隣のテーブルでは、目元涼やか、鼻筋がくっきり通ったお姉さんが、煙草を片手に、早いピッチでジョッキを傾けている。いわゆるひとつの「はちきん」ですね。

例の「たっすいがはいかん」という暖簾もかかっている。野球の方で説明したが「薄味はダメ」という意味。キリンビールが高知限定でキャンペーンをしてから、そこらじゅうで見るようになった。

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言葉の通り、高知の人は人づきあいでも、商売でも、何事にも「濃厚なのがええ」のである。京都のように「あんさんがたとうちらとは違いますよって、すんまへんなあ」みたいな素っ気なさは微塵もない。高知の言葉は東部と西部ではかなり違うが、中部、高知市のあたりではほぼ関西弁のイントネーション。しかし気質は相当違うのだ。

気持ちが良くなったので、昔お手伝いした店の唐揚げと、土佐名物の鯖の寿司、そして中ジョッキで延長戦。今度はテーブルも変える。

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食べた食器やジョッキは返さなくてもいい。専属のおばさんが集めに回っている。雇用も生まれているのだ。

なでしこジャパンの試合をテレビで見ながら、今度はゆっくりとビールを楽しむ。昔は中ジョッキなら10杯くらい飲んでも、一度もトイレに立たなかったが、今は2杯で十分満足。

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久しぶりに来て思ったのは、店がつぶれていないということ。私が手伝った店も含め、昔からある店が残っている。元気だ。
浮き沈みの激しい世の中だが、誰でも家族になれるような高知ならではの連帯感が、今も生きているのだろう。他の地域では成立し得ないのではないか。

高知にはいろいろ美味しいものがあるが、私はひろめ市場の空気が、一番美味しいと思っている。


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広尾晃、3冊目の本が出ました。