30歳を過ぎて独身だったので、母親が心配をして見合い話をたくさん持ってきた。広告会社で毎日終電まで働いていたので、親は先に寝る。で、下駄箱の上に「釣書(身上書)」の封筒を置き、その上にバナナを重石か何かのように乗っけるのが常だった。。

別にそういうルールではないが、そのバナナを食べれば見合いをしなければならないような感じになって、十数回は見合いをしたと思う。
気の重たいものだった。当時の仲間は
「いいなあ、見合いなんてしたことない、いっぺんくらいしたかったな」などと言ったが、その言葉の端っこの方に「かすかな優越感」があるのを私は見逃さなかった。

それはともかく、私は深夜、家に帰るとバナナを食べて、次の休みにお見合いをしていたのだ(結局、奥さんは職場で見つけたのだが)。

最近、はたと気が付いたのだが、この世に生を受けて五十数年、私はテーブルなどにバナナがおいてあって、それをスルーしたことは一度もない。必ず手に取り、食べた。
見合いの話がなくとも、バナナを見れば、私は100%皮をむき、むしゃむしゃと食べてきた。
もう私の時代はバナナは高級品ではなかったが、必ず食べてきた。
「好きなのか?」
と言われれば、それほどでもない。
しかし、目の前にバナナがあれば、食べずにはおれない。サルか俺は、と思う。

しかし、旅先などでコンビに入ると一本だけで売っているバナナを買うことも多い。
なぜかわからないが、ホテルの部屋でブログを書くときもバナナを食べている。
「好きなのか?」
と再度問われれば、そうかもしれない、とも思う。



最近、スーパーなどで「バナナの食べごろ」みたいなポップを見た。
「皮に茶色い斑点が出てきたら熟れた証拠です。甘くておいしくなっています」
などと書いてあった。
驚愕した。バナナの皮に斑点が出ると、皮はくたっと張りを失う。するっと自然に剥けてしまう。身は甘ったるくて、においが強くて、くたびれた味がする。
それを食べごろと言うのか!
この斑点をシュガースポットと言うそうな。ええ格好言うな!

バナナは皮がまだほんのり青くて、角ばったところのエッジが立っていて、剥けば繊維が縦方向にほつれて落ちるようなのがいい。
身はしっかりしていて、しゃきっとした歯ごたえがある。まだ若い香りがして、甘みもやや浅く、酸味が強い方がいい。
そういうバナナは私に元気をくれるような気がする。
くたっとしたバナナは、甘いだけで、不健康な感じさえする。

そういえば、今年になって「高級なバナナ」というのも食べた。これは熟してはいなかったが、実がねっとりしていて、不自然に甘かった。
これもおいしいとは思えなかった。

ネットで「バナナの食べごろ」を検索すると「シュガースポットが出たらなんとやら」みたいなのがいっぱい出る。完熟バナナは免疫機能を高めるとか書いてある。
中には身まで真っ黒けになったのがおいしい、と書いてあるものまである。

人の好みは好き好きだが、世は総じてマニュアル時代であり、自分の感覚よりもマニュアルを重視する人が多い。
バナナだって「ほら、シュガースポットが出ているから食べごろよ」ともったいをつけて食べさせる人もいるのだろう。

それは勝手だが、私はまだ若いバナナが好きだ。甘すぎるバナナ、つんとにおいが鼻につくようなバナナ、やわらかくてとろけそうな実は食べたくない。

今、スーパーではまだ青いバナナを売っている。「追熟させてね」などと書いてある。家へ帰って食べごろまで置いておけということだ。
私は買ってきて、日を置かずに食べる。斑点が出るまで待つことはない。

しかし鮮度管理技術が進めば、シュガースポットが出たバナナが店頭に並ぶことも考えられる。
いくら「若いバナナ」が食べたくても、手に入らない時代が来るかもしれない。

そうならないために「若いバナナが好きだ、そういう人も世の中にはいる」と声を大にして言っておきたい。

私のサイトにお越しいただき、ありがとうございます。ぜひコメントもお寄せください!


2015年大谷翔平、全登板成績【投手の刃が冴え、最多勝】