私は一昨日、宜野座村で阪神タイガースのキャンプを見てから、となりの金武町まで海岸沿いを歩いた。

一つは金武町で韓国の起亜タイガースがキャンプを張っていたからだ。これを見ようと思った。もう一つの目的は、金武町には沖縄本島で唯一の「戦前からの本堂」を持つ金武観音寺を見るためだ。
十数キロは歩いた。雨風が吹き付けて大変だったが、楽しいウォーキングだった。

韓国野球の情報は全く乏しい。金武ベースボールスタジアムには、起亜タイガースの旗が風になびいてはいたが、人っ子一人いなかった、どうやら休みらしい。

そのままとぼとぼと引き返して、観音寺へ向かったが、その途中でコーヒーを買うためにコンビニエンスストアに立ち寄った。
レジ前に並んでいると、3~4歳くらいの金髪の男の子と女の子が、いくつかのお菓子をレジに差し出した。
店員が計算をしてお菓子を袋に入れ「1270円です」といった。しかし、二人の子供はぽかんとしている。
「お金を持ってないの?」
と聞くが、答えない。日本語ができないわけではなく「これ持って帰る」と繰り返す。
金武町にはキャンプ・ハンセンがある。おそらくは軍人か軍属の家族だろう。日本生まれではないかと思われる。
いつも母親に連れられて買い物をしていたのが、今日は二人だけで来たのだろう。

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袋をつかんで外へ出ようとするのを、女性店員が肩を抱いて押しとどめる。
子供の目線にしゃがんで「だめ」と言っている。強い口調ではない。
子供の身元は分かっているのだろう。男性の店員が
「あとからお金をもらえばいい」
と言ったが、女性店員は
「おかしな癖をつけたら困るから」という。
私も含め、店にいた人たちは、成り行きが気がかりで動けなくなってしまった。

どうなることかと思ったが、そこへやってきた女性が「どうしたの?」
と店員に聞いて、事情を理解すると
「この子たちのお母さんの携帯電話を知っているから」
と電話をしだした。
女性店員は、二人の肩を抱いて
「お母さんが来るからね」と笑顔で言った。
ほどなく白人の母親が車で駆けつけて、お金を払い、子供たちを車に乗せて帰っていった。

私は最高の結末になったことにほっとした。
誰かが代わりにお金を払ったり、お金を払わせずにお菓子を持たせたり、店員が子供を叱りつけたりすることはなかった。
いちばん穏当で、子供たちにも理解できるような結末になったのだ。

日本の国は、「保水力」が保たれている、みずみずしいコミュニケーションができているな、と思った。ずっとこういう世の中であってほしいと思った。



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