このブログでも以前に書いたが、ちょっとだけ縁があったこともあって、彼がフジテレビのアナウンサーだった時から注目していた。

会社を追われた真相は知らないが、それ以降のたつきの道は、相当に険しかったに違いない。
女子アナと違って、アイドル的な人気はないし、二枚目というほどでもない。弁舌さわやかでもない。しかも、芳しくない評判とともに路傍に放り出された。
彼は必死でメディアの世界に生き残ることを考えた。
幸い文章が書けたので、まずはアナウンサー時代のあれこれをブログで書いた。
そうした内情暴露的なブログは、業務上知りえた秘密を無断で明かしている疑いもあったし、ネタ切れ必至だったので、彼は世上の様々な問題にくちばしを突っ込むようになった。

大それた志があったとは思えないが、知名度の貯金があるうちに、それなりに説得力のある文章を書くこともできたので、いっぱしの「論客」「知識人」として注目を集めることができるようになった。
そして、せこいテレビのMCの仕事にもありつけるようになった。元フジテレビのアナウンサーという「残り香」があせないうちに、何とか世渡りができたという感じだったのだが。

ついつい筆が滑ったということだろう。
長谷川は、こういうタイトルのブログを書き、BLOGOSに転載されたのだ。

自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担にさせよ!無理だと泣くならそのまま殺せ!今のシステムは日本を亡ぼすだけだ!!

中身はひどいものだ。
彼はある種の人々の人工透析への過程を
・バカみたいに暴飲暴食を繰り返す
・腹は出る、腰は痛める。周囲に注意されているのに、無視。
・それでも食べ続け、運動もしない。
・周囲は必死に注意。でも無視。
・で、糖尿病になる。
・にも関わらず、運動もしない、食事も先生から言われたことをろくに守らず好き放題。

と書いているのだ。
その挙句に、年間500万円かかる人工透析を受けることになると。
そして、
キリギリスは餓死しなければいけないのです。でなければ、アリさんはやる気を失うのです。やる気を失ったアリさんがキリギリスに変身してしまうのです。それは当然の流れなのです。だって、人間の脳は「出来るだけ怠ける方向に」動くように出来ているからです。

と書いている。
長谷川のこのブログは修正されているが今も彼のサイトで公開されている。

かれは注釈で
「先天的な遺伝的理由」で人工透析をしている患者さんを罵倒するものでは全くありません。誤解無きようにお願い申し上げます。
と書いてはいる。
しかし多くの人は、長谷川は、人工透析をしている患者は厄介者だと言っていると誤解するだろう。

長谷川のこの文章は、その前提となる事実関係がすでに間違っている。

私は会社社長などお金持ちの文章を個人的に代筆したことが何度かあった。
自宅に呼ばれ、ヒヤリングをし、食事をごちそうになるというのがパターンだが、彼らの食事は極めて質素で量も少なかった。
お金持ちが太って脂ぎっているというのは、昔話に過ぎない。今の金持ちは適度な運動と適切な食事によってみんなスリムだ。糖尿病など生活習慣病とも無縁であることが多い。

いしかわじゅんという漫画家は、30年ほど前、結核にもめげず懸命に生きる少女、という昭和の貧困のステレオタイプのパロディとして、糖尿病にめげず頑張る少女というパロディ漫画を描いたことがある。それは、その当時としても相当ひどい漫画だった。30年前の時点で、糖尿病が金持ちの不摂生、自堕落の象徴だという観念はなくなっていたと思う。

今、糖尿病は「貧困」の象徴になりつつある。
低価格で高カロリーの食べ物を摂取し、適度な運動をすることなしに体に負荷をかけて、糖尿病になるのは、主として貧困層だ。
いわゆる底辺校に行けば、すぐにわかるが、貧困にあえいでいる子供たちの多くは太っている。健康面に配慮することなく、ジャンクフードを食べ続けた結果だ。
こうした若者のかなりの数が、中年になるまでに糖尿病になっている。

確かに不摂生の挙句かもしれないが、彼らのそうした自堕落は「将来への絶望感」によるものであって、それを「自業自得」というのは、酷に過ぎるだろう。

さらに言えば、自業自得の挙句に糖尿病、人工透析という流れに至ったとしても、だからといって自己負担、野垂れ死にをすべきだとは、あまりにも酷薄すぎる。
最近の、新自由主義者は何かといえば「自己責任」を口にするが、競争から脱落したもの、自己管理ができないものは死ぬしかない国家は、民主国家でも文明国家でもない。

そうした人々に自助努力によって再起を促すのは当然のことだが、同時に、高すぎる人工透析の価格体系を見直すとともに、他の医療手段の開発も推進すべき、というのが妥当な意見ではないだろうか。

P9285934


長谷川豊は、心の底から「自堕落の果てに人工透析に至った患者は死ね」と思っていたわけではないと思う。
いろいろな議論に首を突っ込んで、単純な対立の図式を作ってPVを稼ぐ手法を会得し、そのパターンで「自堕落人工透析患者は死ね」というブログを書いたのだと思う。

事前にチェックできなかったBLOGOSもどうかしていると思うが、単純な対立のパターンを繰り返しているうちに、善悪好悪の区別もあいまいになった長谷川豊は、やはり愚かだったと言えよう。

私もブロガーだ。主として野球のことを書いているが、PVを集めるために過激な言葉を振り回すことも多い。特に見出しは、先鋭化させることを常に考えている。ブログをやる以前とは、ずいぶん変わったと自覚している。
その点では、長谷川の暴走を頭ごなしに非難することはできない。

しかし、私は、自分の書きたいことだけを書いている。心にもないこと、興味のないことは書かない。他のメディアや雑誌に寄稿するときは、もちろんオーダーに従った文章を書くが、こと自分の名前で書くブログは、好き放題書いている。書きたくないテーマや趣旨では書いていない。だから反論もできる。それが非常に重要だと最近認識するようになった。

憶測で書くが、最近の長谷川豊は、本当はたいして興味もなく、関心もない事柄も書かざるを得なくなっていたのではないか。それでもPVを稼ぐために、派手な言辞を弄さなくてはいかなくなった。そして心にもない過激な表現をするようになったのではないか。

長谷川の”失脚”は大きなニュースにはならなかった。もともとが大した存在ではなかったのだろう。
彼の高校時代の恩師や仲間の期待を知る者としては、少し悲しい。

Change.Org
糖尿病患者や透析処置を必要とする人を自堕落と決めつけて殺せと煽っておきながら中傷はしていないと開き直る長谷川豊アナウンサーの人権侵害行為に抗議し、ブログでの全面謝罪を要求します



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