うちの8歳になる犬が、他の犬にとる態度は大きく分けて2つ。「噛む」か「無視」である。



「無視」はさらに2つに分かれる。小さくてきゃんきゃん吠える座敷犬は、邪魔臭いから無視。
ウサイン・ボルトの来世のような筋骨隆々のドーベルマンや、ガウンを着たドナルド・トランプのようなグレートピレニーズ(いるんだな、近所に)などは、かなわないと思っているのか、気が付かないふりをする。

噛むのは顔の丸い中型の座敷犬、そして柴犬だ。体格が似通った犬には闘争心を燃やすらしい(近所の秋田犬はライバルであり、今もけんか腰だが)。

そんな中で、わずかながら、憎からず思っている犬がいる。
その1頭、小学校の前のお屋敷の、はなちゃんは、真っ白な柴犬だ。小さくて、口吻がつんととがって、目がくりくりとよく動く。人間でいえばホラン千秋みたいな感じではないかと思う。

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このお屋敷のご主人は一二度しか見たことがない。ほとんど話もしたことがない。
でも、この犬の名が、はなちゃんなのは知っている。
2年ほど前、お庭デビューしたばかりのこの犬は、愛嬌が良くて、いかにもうれしそうで、近所のお散歩仲間で人気者だった。
自分の犬のおやつをあげる人も多かったようで、すぐにころころしだした。
そんなある日、家の門扉に小さな貼り紙がされた。
「はなちゃんは、ダイエット中です」
それ以降、近所の人は、はなちゃん、はなちゃんと呼ぶようになった。

うちの男は、初めて会った時に、尻尾をゆるゆると振って、門扉越しにはなちゃんに近づいていき、少しおろおろしながら鼻先をくっつけあったのだ。
見つめあったと思ったら、すぐに目をそらした。犬も照れるのだ、と初めて知った。
柵越しの逢瀬だからそれだけだが、その日からしょっちゅうお屋敷の前に行くようになった。

はなちゃんも嬉しかったようで、うちのが行くと、とっとっと、と駆けてくるようになった。
それから2年、はなちゃんは少し大きくなり、背中の当りに茶色い毛が目立つようになった。
何も知らない娘さんから、ちょっとはすっぱな女に変わった感じだ。

うちの男との関係も少し変わってきた。
相変わらず門扉の前まで近づいていくが、鼻先をくっつけたりせず、ちょっと横を向いてみせるのだ。
ときには、お屋敷の前の街路樹にちっ、とおしっこをするだけで立ち去ろうとしたりする。
「ほら、はなちゃんいてるやろ、挨拶せなあかんがな」というのだが、どこかふてくされて素直ではない。

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おそらく、この男は「いくら仲良くしても、その先はないのだ」ということを悟ったのだと思う。飼い犬同士の恋愛などそんなもんである。
この男はやんちゃがすぎて、2歳の時に去勢手術をしているが、それでも毎日、私の足に抱きついて股間を押し付けてくる。その気は満々なのだ。
はなちゃんは、まだおぼこいのか、そういう願望がないのか、うちの男の変わりようにちょっとショックを受けているようだ。

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手のひら返しの冷淡さに、人間と共生する「犬」という生き物のもの悲しさを少し感じる今日この頃である。

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