横綱の数こそ揃っているが、今の大相撲は屋台骨が細ってきている。白鵬時代がうんざりするほど長く続き、先が見えないのだ。
一人の横綱が長期間君臨するような相撲界は、健全ではない。
「谷風小野川時代」「梅常陸時代」「栃若時代」「柏鵬時代」「北玉時代」「輪湖時代」「若貴時代」、いわゆる「時代」は、大相撲の場合、龍虎相打つ対立の時代なのだ。
寛政期の雷電、大正期の太刀山、昭和期の大鵬、歴史的に見ても、一強が長く君臨する時代は、相撲のレベルは低下するのだ。

とりわけ白鵬一強時代は、その長さと寡占の極端さで、相撲史に例を見ない。

2010年からの現大関以上の力士の年間勝利数の推移。

kise
(修正)

いまさらながら、白鵬の寡占振りのえげつなさがわかる。
2010年はわずか4敗である。白鵬は2009年も86勝だった。それまでの年間最多勝は、朝青龍が2005年にマークした84勝。白鵬はそれを上回る成績を2年連続で記録。2年、180番取って8回しか負けなかったのだ。

白鵬以後、大関に上がった力士では鶴竜の71勝が最多。他に70勝以上を挙げた力士はいない。
モンゴル出身横綱の日馬富士も、鶴竜も、ピークを過ぎて、下り坂なのだ。

昨年、日本人として久々に優勝した琴奨菊は大関陥落、照ノ富士、豪栄道に至っては、大関にしがみつくのが精いっぱいという感じだ。

他の横綱、大関陣も、若手力士も、白鵬あまりの強さ、持久力の前に、根負けしてしまった感がある。

そんな中で、一番マシな成績を上げ続けてきたのが稀勢の里だった。

稀勢の里は不戦敗が1つあっただけで、入幕以来休場はない。不成績でもずっと土俵を務めてきた。
負けが込んでも、休まなかった。その勤勉さ、まじめさが一番の持ち味だ。

他の横綱、大関が、休場を重ねる中で、稀勢の里には優勝できないまでもそこそこの成績を上げ続けることを期待したい。

衰えが見える白鵬はもちろんライバルだが、同時に大相撲界を支える同志でもある。優勝争いに絡んで場所を盛り上げる役割だ。
大鵬時代の佐田ノ山、双葉山時代の羽黒山のような位置づけだと言えようか。

稀勢の里は北の湖によく似ている。腕力が強く、圧倒的な圧力があり、足腰もよく、四つ相撲もうまい。しかし下から攻められると、上体が反り返る悪癖があるところもよく似ている。
違うのは、北の湖がしたたかな勝負師だったのに対し、稀勢の里はここぞというところで弱気の虫が出るということだ。取りこぼしの多さはそういう気持ちの弱さに起因している。

白鵬と稀勢の里ががんばっているうちに、フレッシュな新勢力が台頭してくるのが、理想的なストーリーではないか。つなぎの横綱として、できるだけ長く頑張ってほしい。

kisenosato



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