「なんとなく嫌な感じ」の下は、頭の中での整理ができていないが、またもや安倍政権の顔ぶれの愚劣さが表れたので、それに因む話を先にしておきたい。
先々週、私は高知でマニー・ラミレスを見た帰りに岡山に泊まった。広島の図書館で調べ物をする必要があったからだ。
朝、時間があったので岡山城を見に行った。前日は高知城に行った。続けて名城を回る。ぜいたくな時間ではあった。

私は岡山市内のお寺を見て回ったことが何回かある。岡山城にも行ったはずだが印象は強くない。市外の東側、旭川沿いに精悍な姿が見えてくると、そぞろ気持ちが浮き立った。

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まだ桜は5分咲き程度だったが、華やかな空気が漂っていた。

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重厚な甍の連なりを横目に見ながら、不明門をくぐりぬけ、石段を登って城の正面、天守と正対して絶句した。
こんなことになっていたのだ。

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近づいてみる。

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城の外壁の板が、ラッピングされて、縞模様になっていたのだ。

ボランティアガイドが近づいてきて「岡山はマスキングテープのカモ井加工紙があるんです。お城もマスキングしたんです」と説明した。
どんなあほ面をしてそんなことをいうのかと、ガイドの顔を見た。善良そうな老人ではあった。

姫路城が「白鷺城(はくろじょう)」と言うのに対して、岡山城は「烏城(うじょう)」と呼ばれてきた。江戸期にはともに池田氏の居城であり、対比を意識しての別称だ。
「髪は烏の濡れ羽色」という言葉があるが、華麗な姫路城に対して、漆黒の烏城は無骨だが精悍で、独特の風格があった。それが持ち味であったはずだ。

この柄が良いか悪いかはさておいて「烏城」を、伝染病患者のような柄にしてしまうのはどういう意図があってのことか。

一般的に観光客は、同じ土地に足しげく通うことはない。多くは一期一会でやってくる。そのお客に、烏城の看板に偽りある姿を見せるのは何のためか?何がうれしいのだ。

岡山城は文化財ではない。天守閣は空襲で焼け落ち、1966年に鉄筋コンクリートで再建されたものだ。だからこの建物にどんなトッピングやラッピングをしようと、文句を言われる筋合いはない。

しかし、今の天守は、往時の「烏城」の面影を正しく残している。「白鷺」に対する「烏」のコントラストを鮮やかに保っている。建物そのものは文化財でないにしても、城には歴史的な価値があったと考えられる。とりわけその価値は「外壁の黒さ」にあったはずだ。

しかし、岡山の人々や行政は、その価値を認めていなかった。飽き飽きしていたのだと思う。だからたまたまマスキングテープが「マツコの知らない世界」などで話題になると、ラッピングしようという話につながったのだろう。
いいアイディアに思ったかもしれないが、いかにも田舎者のお手軽な発想だ。

ここでいう「田舎者」とは、自分たちの郷里の文化財へのリスペクトの気持ちがなく、受け狙いでおかしなことをすることが「格好いい」と思っている勘違い野郎のことだ。残念ながら、若手経営者やベンチャー、そしてそれに乗せられた行政には、こんな輩がたくさんいる。

自分たちが住んでいる土地に価値を見いだせない人ほど格好の悪い連中はいない。

一生に一度、この岡山城にやってきて、その姿が縞柄になっているのを見た観光客がどう思うのか、それを想像できない知的貧困と無教養。政令指定都市が笑わせる田吾作都市である。

ご丁寧にこの城の姿をポスターにして全国に掲出している。恥さらしである。

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今、地方にはこういう輩がたくさんいる。地方の活性化を「歴史遺産、文化財の切り売り」と心得ている連中である。
奈良県知事の荒井正吾は、若草山にロープウェーを引き、平城京を駐車場にする構想を発表して顰蹙を買った。若草山は野芝と言う日本固有の芝でおおわれている。そこらのゴルフ場の芝とは別物だ。これだけの芝の自生地は日本にも数少ないのだ。荒井はそのこともわからず、奈良をちゃちなテーマパークにしようとしたのだ。

橋下徹が大阪市長時代に文楽をいじめて予算削減をし、カジノ誘致を推進したのも同様だ。
文化や歴史を知るにはそれなりの学びが必要だ。教養もいる。そうしたことを軽視して、あたかも不動産物件を扱うように「利用」し、「処理」しようとするのが今流の安部ちゃんにすり寄る政治家である。

思い切ったことができるのは、教養がなくて、歴史や文化を知らないからなのだが、彼らは、自分たちがビジネス感覚があると勘違いしている。こういう下品な連中が地方行政、文化行政の担い手になっているのは、まともな政治家が膝下にいない安倍政権ならではだと思う。

昨日、山本幸三地方創生担当大臣は「地方創生とは稼ぐこと」と定義し、各地の優良事例を紹介した上で「一番のがんは文化学芸員と言われる人たちだ。観光マインドが全くない。一掃しなければ駄目だ」と発言した。この男の感覚ではおそらく岡山城は「優良事例」になるのだろう。
「歴史遺産」や「文化財」は「金儲け」に役立てなければ何の価値もない。その保護や、調査研究などはどうでもいい。あきれ果てた無教養ぶりだ。

今村雅弘復興相といい、山本幸三地方創生担当大臣といい、安倍政権には史上最低を競うような閣僚がひしめいている。この政権が長引けば、日本が営々と築いてきた文化遺産は、次々と蚕食されることだろう。

後世に残すべき歴史遺産、文化遺産と、ディズニーランドの区別がついていない無教養な政治家に、これ以上好き勝手を許してはならない。


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