安倍政権の批判を書こうと思ってなかなか書けていないが、その前に、ここ数日、あまりにも愚かな議論が巻き起こっているので、一言いいたい。

是枝裕和監督が「万引き家族」でカンヌ映画祭の最高賞である「パルムドール」をとった。これは国際的な快挙だが、安倍政権は国民栄誉賞どころか、公式の祝意さえ出し惜しみした。この映画が、今の日本の格差社会を描いたものであり、現政権への鋭い批判が含まれているからだという。是枝監督自身も安倍政権に批判的だとされる。

しかし是枝監督は、この映画を文化庁の助成金を得て制作した。このことが明るみに出るや、是枝監督への批判が殺到しているという。
「安倍政権を批判しているのに、助成金だけはぶんどるのか?」「返上するのが筋だろ」安倍ちゃん大好き人間だけでなく、反権力の立場の人さえもそう言っている。

日本人はいつの間に、こんなにお馬鹿さんになったか。

日本は民主国家のはずである。どんな思想信条を持っていようと、平等な基本的人権が与えられ、健康で文化的な生活が保障されている。そして文化的な活動をしようという人には、これまたどんな思想信条の持ち主であろうと、公序良俗に反しない限り、助成金を申請することができる。
文化庁など行政は、その意義を認めれば、申請者が自民党支持者だろうが、共産党支持者だろうが、政治背景とは全く無関係に助成金を出す。日本がまともな民主国家である限り、当たり前のことだ。是枝監督に助成金を給付した文化庁は、誠に真っ当な判断をしたと言えよう。

「安倍政権に批判的だ」とか「自衛隊反対だ」とか言う理由で補助金が出なかったり、減額されたりするような時代が来れば、日本は闇になる。
そもそも行政とは連続性のある、息の長い仕事だ。数年単位で交代する政権の意向でその方針が大きく変わるようでは、日本国家は維持できない。

是枝監督を批判する人々は、たとえば安倍政権が退陣して、全く違う方針の政権が誕生して、安倍政権時代に補助金や政府助成を得ていた人たちが「親安倍だ」という理由で受給できなくなることを容認するのか?「仕方がない」と思うのか?

saigai


この問題で一番情けない対応をしたのは安倍晋三その人だ。同時期に冬季五輪の羽生結弦に国民栄誉賞を与えながら、同様に世界に日本の名を高からしめた是枝監督には、反安倍だということで、洟も引っかけなかった。ケツの穴の小さいつまらない人間だということを露呈した。

日本国総理大臣は、自分を支持する人だけの利益の代表者ではない。熱烈支持者も、中途半端な態度の人も、猛烈な反対者も含めて、日本国民全体の利益代表なのだ。
その自覚があれば、安倍晋三総理大臣は、羽生結弦と同様に、あるいはそれ以上の熱意をもって是枝裕和を祝福したはずだ。それでこそ我々の総理だ。そうしていれば、私のような安倍大嫌い人間も、野党など反対勢力も、その度量に一定の評価をしたはずだ。ちょっとは見直したはずだ。

もし税金が「政権の賛同者」に優先的に使われるようになれば、どうなるのか。
その生きた例が、ついお隣にあるではないか。プーチンのロシア、習近平の中華人民共和国を見て見よ。
民主主義とは名ばかりで、政府に反対する人は冷や飯を食っている。なかには生命の危機に瀕している人さえいる。中国は総背番号制が進んでいるが、そのデータに「反政府活動」「共産党に反抗的」とインプットされると、移動の自由も就職も制約されるという。是枝監督を非難する人たちは、ロシアや中国を「理想の国」だと思っているのだろうか。
「プーチンのロシア」「習近平の中国」の列に「安倍晋三の日本」を並べたいのか?

是枝監督は世論に押されて助成金の返上を考えているようだが、それはダメだと思う。日本国民が等しく享受できる権利を「反政府だ」という理由で返上してはならない。それが前例になるのは、本当に恐ろしい。

民主主義国家とは「税金を使って、現政権を大っぴらに批判できる」自由を有する国のことだ。
そんなこともわからないほど、みんな馬鹿になったのか!


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