hibikore

人品骨柄は、顔に出ると言うが、昨日の経団連、米倉会長の記者会見の映像を見て、本当にそうだと思った。

誤解なきよう願いたいが、私は別に米倉弘昌氏がぶさいくだとか、老いぼれブルドッグに似ているとか、鼻毛が出ているとか言っているのではない。その品性が、言動に表れていると、言っているのだ。
 

経団連会長と言えば「財界総理」という別称のある、経済人の最高の地位である。日本の経済活動を統べて、未来へ向けて動かしていこうという極めてスケールの大きな役職である。当然、その地位に就く人には、経営手腕や政治手腕だけでなく、それを超えた大局観や、無私の精神、そして何より、国民を安心させるような懐の深さ、信頼感が必要なはずだ。


過去の経団連会長がすべて、容貌魁偉だったわけではない。貧相な人も、貫禄のない人もいた。しかし、ここまでレベルの低い「財界総理」は、初めてではないか。

 



この人は、昨日の大阪市での記者会見で、こう述べた。以下、サンケイ新聞より抜粋。

 

関西電力の大飯原子力発電所第3、4号機の再稼働見通しが強まっていることについて

「安全性に対する検討が十分にされており再稼働は当然のことだ」


再稼働に対し一部に慎重な考えを示している地元の自治体の首長に対し

「国が大丈夫と判断されたのであればそれを信用すべきだ。電力は国民生活の基本のインフラだ。人気取りの政治ではなく国民生活を考えていただきたい」


橋下徹大阪市長などが再稼働は今夏限定にすべきと発言したことには

「発電所の仕組みを知らない人の発言だ」

「住民に電力を安定供給するよう考えるのは首長の責任だ。専門家が下した判断に不信感を持ったり、あるいは住民に不信感を抱かせるのはいかがなものか」


2030年までの再生可能エネルギーの導入目標について

「再生可能エネルギーは質的に劣る電力だ。それに依存するようなエネルギーの供給体制が果たしてありうるのか」

 

国民の原子力発電への不信感、不安の念を、何の説明もすることなく蹴散らし、未来永劫に原子力発電のかまを炊き続ける、と明言したのだ。
 

この人は、福島原発が事故を起こした6日後に

1000年に1度の津波に耐えているのは素晴らしいこと。原子力行政はもっと胸を張るべきだ」

と東電を擁護している。


要するに、何が起ころうと、原子力発電こそが正しく、それを推進しようとする専門家を「文句を言わずに信頼せよ」と言っているのだ。
 

経団連は、自分たちだけで存立しているわけではない。経済活動は国民が消費活動をすればこそ成り立っている。また、大企業だけでなく、それを支える中小企業があってこそ、成立している。


エリート社員はともかく、そうした一般の人々が、自分たちの皮膚感覚として、原子力の行く末に不安を感じ、それを推進する官僚や、電力会社、そして“専門家”に不信感を抱いているのを「信用しない方が悪い」と言っているのだ。


この日は、その他の経済人も政府の再生可能エネルギー導入に対して、真っ向から否定をした。

 

森詳介関西電力会長

「再生可能エネルギー比率を優先し、コストなど国民生活に与える影響の視点が二の次だ。強い違和感を覚える」

西田厚聰東芝会長

「政府が提案している導入目標数字は意欲的というより野心的で、エネルギーの安定供給を損なう」
「経済活動をそがないよう留意してもらいたい」

 

この人たちは、「再生可能エネルギーはなしだ。大企業の金儲けがうまくいってこそ下々も潤うのだ。その邪魔をするな」と言っているのだ。

 

ここまで、企業人の本音がむき出しになったのは珍しい。それだけ、業績不振で追い詰められているのだろう。
 

昔の経済人は、業績が苦しければ苦しいほど、泰然自若とし、社員や世の中を安心させたものだ。そして、近視眼的になることを戒め、苦しいからこそより長期的な展望をしたものだ。


今、日本経済がダメなのは、リーダーたちが、この程度のちんけな立ち居振る舞いしかできないからではないか。業績不振が自分の身に降りかかることを恐れ、責任を逃れたいという一心で、世の中がどう受け止めるかも忖度せず、こんな発言をするのだ。


放射能汚染のために故郷を追われた人々、子供たちに放射能の影響のある食品を食べさせたくないと神経を配る母親、風評被害に苦しむ生産者、そして原発事故が起これば自分たちはどうなるのだろうと不安を抱く原発立地自治体の住民は、みんな経団連と地続きにいる同じ日本人だ。この人たちの不安や不信感を真っ向から否定して、何が「経済活動」だ。


たとえ、最終的に原発稼働を存続させるという結論に至るとしても、もっとまともな言いようがあるはずだ。昔の財界人なら、一般の人々を安心させ、「この人たちに任せておけば安心だ」と思わせるパフォーマンスをしたはずだ。少なくとも、誠実さは見せたはずだ。


昨日の財界お歴々の発言に「お先真っ暗だ」と思った人は多いはずだ。

苦しい時に、人々に希望を与える発言もせず、自分たちの損得ばかり考えていて、何が「財界総理」だ。

 



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