hibikore

実は一昨日の「人志松本のすべらない話」は、録画で見た。裏番組のNHKスペシャル「産みたいのに 産めない~卵子老化の衝撃~」を見ていたのだ。“衝撃”という名にふさわしい番組だった。

 NHKのサイト



私は結婚翌年に長男が生まれ、2年後には長女が生まれた。子供は授かり物というが、この間、何の苦労をした思いもない。まるで生理現象のように(そういうと嫁さんは怒るだろうが)、子供が出来て出産した。

世の中に「不妊」という問題があるのは、頭では承知しているが、それがどのような重さなのかはわからない。
 

不妊に悩んでいない世の人間の意識は、おおむね似たようなもので、子を持たない夫婦に「作らないのか」「出来ないのか」ということが、どれほど相手を傷つけるかはほとんど想像できない。夫婦あるいは一方の努力が足りないか、体に異常があるか、いずれかだと思っている。


日本という国は、「結婚すれば子が出来て当然」という意識が強い。「嫁して三年子無きは去れ」という無残な言葉もあるし、「石女(うまずめ)」などという言葉もある。不妊は妻の責任という意識も強い。


また、その裏返しとして「子作りが出来ない男」に対する偏見も強い。不妊の原因が、男性にもあるということは、近世になって明らかになったのだが「結婚すれば子が出来て当然」の国では、子種がない男も、まるで「男ではない」ようにみなされたのだ。


こと「不妊」に対しては、日本という国は最低レベルの意識だといえよう。そして、その意識はここまで情報化が進んでもいっかな解消する気配はない。


こうした「不妊」への偏見がある一方で、日本人は「妊娠」を正面から理解してこなかった国だ。妊娠のメカニズムを知らないままに成人する男女があまりにも多すぎた。


この番組では「卵子老化」の問題を取り上げていた。男性の精子が、毎日生産され、ほぼ老衰するまで続くのに対し、女性の卵子のもととなる「卵細胞」は、生まれたときから体内にあり、以後生産されることはない。毎月排卵という形で体外に出る。つまり減っていく。また卵細胞は、妊娠適齢期を過ぎると老化する。受精する卵細胞が少なくなり、妊娠が困難になるのだ。35歳を過ぎれば体外受精で妊娠する50%以下に落ち、45歳では0.5%にまで落ちるという。


多くの日本人はこのことを知らない。不妊治療を受ける患者の53%が体外受精をすれば45歳まで妊娠は可能と考え、中には50歳まで可能と考えていた患者も17%いたという。


不景気で、社会福祉の将来も危うい中、子供を持ちたくないと思う男女は増えている。また、女性の社会進出が進む中、結婚、妊娠の前に、キャリアを積み重ねたいと思う女性も増えている。30歳、あるいは35歳までは仕事に打ち込み、それから家庭に入り、子供を作るというライフプランを描いている女性は非常に多い。


昨日の番組は、こうした女性に鉄槌を打ち込むような衝撃を与えたはずだ。この問題は、時間を逆戻りさせない限り解決できない。多くの働く女性に「絶望」を与えたことだろう。


私たちは、不妊治療に励む有名人女性のニュースに対し、一種の奇異の眼差しを向けがちである。憐憫の情をかけるような感覚、見下ろすような視線をも向けていたはずだ。しかしそれは奇異でも特殊でもなく、「卵子老化」という、生物の必然的な定めによるものだったのだ。


私自身も、今まで偏見を持っていたのだと思い当たった。恥じ入るばかりだ。


同時に、この国の「教育」の至らなさも痛感する。つまらない性情報はおびただしく発信するが、肝心の「性のメカニズム」については、ほとんど何も教えてこなかった。


学校の性教育と言えば、女子だけが教室に集められ、何やら秘密めいたことを聞かされているだけ。「初潮って何や」みたいな話になるだけ。テストもおざなりにされるだけ。つまり「性」=生命のメカニズムについては、ほとんど何も学ぶことなく、大人になるのだ。


言ってみれば、「性」「妊娠」に対する日本人の頭のレベルは江戸時代と何も変わっていないのだ。


日本は世界の実験室のように見られている。史上類を見ない勢いで少子高齢化が進んでいるのだ。高齢化はともかく、少子の問題は社会制度の欠陥と、性教育の不備によるところが大きいのではないか。


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代(もっとも妊娠しやすい時期)をビジネスに打ち込む時期とし、30代になっておもむろに結婚を考える今の女性の人生設計そのものが、少子化に直結しているという事実を女性だけでなく、社会全体で理解する必要がある。そして、世の中の仕組みを変えていく必要がある。


そうしないと、日本人は、社会ぐるみ、国ぐるみで年老いて、衰亡していくことだろう。

 

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